ある日先生が泣いていた
静かに、それでも綺麗に泣いていた
だから俺は思わず、先生を引き寄せて抱きしめてしまった

止める事ができなかった俺を
それでもあなたは恨まなかった

だから先生、
もう、 さよならします


















その世界に取り残されるのなら




















先生、先生はいつも微笑んでいて、その色素の薄い髪を揺らしながら、
同じ人間とは思えないほど美しい言葉を並べて俺と喋っていましたよね
俺はその時間が大好きで、先生が俺の名前を呼ぶ度に、俺の方を見る度に
心臓が張り裂けそうなくらい嬉しくて、泣きたくなっていたの、知ってましたか

先生、・・多分先生は知らないんでしょうね
俺がいつも先生のこと考えていた事とか、その細い肩を抱きしめたいとどんなに願っていただとか
多分気付いてないんでしょうね
だから俺はいつも苛立っていたのと同時に、先生とあんなに近くで喋れたんでしょうね

だけど先生、あの日俺にとって日だまりのように暖かく愛おしい世界は
すぐに冷たくなって消えてしまいました
それも俺の所為なんですけども

先生は相変わらず綺麗ですね
俺ばかり汚れていって、俺ばかり取り残されて、
それに果てない苛立ちと絶望とを感じて
俺ばかり一人で泣いて、俺ばかり一人で叫んで、

『・・ごめん、先生』

先生
どうぞ笑ってよ

おかしいでしょ、滑稽でしょ、
俺自身が笑いたいくらいだよ

『先生・・ごめんね・・・』

でも、ね
涙が出るんだよ、どうしようもないくらい胸が痛くて
どうしようもないくらい息が詰まって
涙が、止まらなかった

先生、先生はずっと綺麗ですね
俺みたいな汚れた奴が触っても、先生はずっと綺麗なままだ

だから、さ 先生
ごめんね


「・・・ごめんなさい、先生」


今目の前に広がる光景は
あなた抜きでは綺麗に映らない

暖かく愛おしい世界は 俺の所為で壊れてしまった

だからもう、さよならだよ、先生


その世界に取り残される
俺の気持ちだけ 生きながらえる


その日、先生は泣いていました

.......end